(ボクの顔と本名を知っている方々。

残念ながらあなた達の期待するようなお話じゃあありません。

あしからず。)


 

小学一年生の最後。

これからタイににしばらく住むと聞いた。

 

 

さかな?

 

 

幼いボクには、もう、

聞いたこともない名前と

もうすぐしたら転校するんだ!

っていうどきどきが、どきどきでした。

 

 

クラスでお別れ会をしてくれた。

何をしたかはあまり覚えていないけれど、

たしか会の最後に

クラスのみんなにハンカチを配って、

全員と握手をしたのを覚えてる。

 

 

 

またこの学校に帰ってくるって聞いていたから、

別に悲しくはなかったし、

むしろ全員と改めて握手するのが

照れくさかった。

 


 

タイでは最高の3年間を過ごした。

 

ビザかなにかの都合上、

ほとんどの日本人の滞在時間は

3年間になる。

 

 

誰もが必ず最初は転入生で、

自分が転校生だとしても

クラスのみんなもまた、過去には転校生。

 

だから別に転校生に対していやらしい

いじめみたいなものはないし、

むしろまれに、お互いに出身地が近いことで

妙な絆が生まれたりする。

 

 

 

 

元々暑いことと、

その暑さが我慢できないというほどでもないので、

タイの小学校の夏休みは短い。

 

 

逆に、春休みがものすごく長い。

転出入があるから、時間を多くとってあるのだ。

 

 

だから1年目、2年目の子どもにとっては

長い休みが嬉しいんだけれども、

3年目の子どもは違う。

 

 

曇りの多い1月、2月になると、

春に本帰国する子は

「あぁ、もうすぐ帰るんだなぁ」って

意識する。

 

 

子どもながらに、

「いつもの休みとは違う」

って理解する。

 

 


 

 

タイから日本に帰るとき、

やっぱりクラスでお別れ会を開いてくれた。

 

 

送り出す子にとっては「いつものこと」だし、

送られる子にとっても「すでに経験済みのこと」。

 

 

だから寄せ書きなんかも

なんだかやっつけ仕事で、

 

寄せ書きの色紙に貼る写真も

なんだかにやにやしている。

 

 

 

いつもどおりのお決まりの儀式が終わって、

いつもどおりバスに乗って帰宅して、

慣れた手つきで引越しの準備をして、

しばらくしたら、

いつの間にかもう帰国するだけになっていた。

 

 

 

いろんな人にさよならを言って、

空港に向かい、

お土産を買ったりして時間を過ごす。

 

 

 

搭乗時間になり、

キィィィーン

ていう音が体に響くところまで行く。

 

 

来た時と同じ飛行機に乗り込み、

席に着く。

 

 

音楽や映画の声を聞くためのイヤホンと、

眠るためのアイマスク

が配られる。

 

 

長い長い待機時間に、

カタログに目をやったり

手すりの操作盤をいじくったり

音楽のチャンネルをひとまわり聴いたり

 

一通りの暇つぶしが終わる。

 

 

いよいよ

「これからいきまっせ!」

な音と体勢になり、

機体はゆっくりと滑走路の端っこへすすむ。

 

 

機体はどんどん加速して、

前の方がぐらっと浮き上がり、

体にG、耳に気圧を感じる。

 

 

あっという間に車が小さくなる。

 

 

窓の外に目をやると、

初めてタイに来た時に

ボク達を迎えてくれた

青々しい田んぼが・・・

 

今度は・・・

ボク達を見送ってくれている・・・・・・

 

ボクは・・・

眠くもないのにアイマスクをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛行機の中で初めて、泣いた。

 

最後の最後に田んぼを見て、初めて泣いた。

 

 

来る時の田んぼと、帰るときの田んぼが違う。

 

 

来る時のさよならと、帰るときのさよならも、違う。

 

 

日本での「また帰ってくる」さよならと、

タイでの「もう二度と会うことはない」さよならは、違う。

 

 

それまで「さよなら」にマヒしていたボクは、

最後の最後の、本当に最後に

本当の「さよなら」を思い知った。

 

 

日本中のいたるところから集まったクラスメイト。

都道府県の勉強をすれば必ずどこかに誰かいる、

そんな不思議なクラス。

 

一度別れたら、もう二度と

そいつらがそろうことなんてない。

 

もう二度と、あのメンツで

ドッジボールも

ケイドロも

サッカーも

話すことも

笑うことも

走ることも

ない。

絶対にない。

本当にさよなら。

 

 

飛行機が安定体勢にはいると

安全ベルト着用のランプが消え、

スチュワーデスさんが

ジュースやお菓子を持ってきてくれる。

 

ボクは窓側に座っていて、

兄は通路側に座っていた。

 

オレンジジュースか何かを頼んだ兄は、

ボクに何か飲むかとたずねたけれど、

 

アイマスクをして寝たフリを決め込んでいたボクは

無反応。

 

スチュワーデスさんも兄も、

ボクを起こそうとはせず、

意外にもあっさりと

そのまま寝かせてくれた。

 

 

でももしかして、気づいていたんだろうか。

アイマスクが

それは

それは

びしょぬれだったこと。

 

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